友人の話。
友人の地元の山には「横になってはいけない」という谷地があった。
休むくらいなら良いが、一旦寝てしまうと、肉吸いに集られるからだという。
肉吸いとは黒く小さな甲虫の類だと聞く。
寝入った動物に張り付き、その獣脂だけを吸い取っていくらしい。
どういう仕組みなのか、吸われている間はまず目が覚めない。
人がこれにやられると、一晩でごっそりと目方が落ちる。
大の男でも二日続けて集られると、生命に関わるほどだそうだ。
運良く吸い殺される前に山を下りても、体調を崩し長患いになると言われる。
仕事で山に入る里の者は、今でもその谷では腰を下ろさないという。
「・・・ダイエットに使えないかなぁ・・・」
友人はそう良からぬことを呟いていた。
女子は少しくらいふくよかな方がよろしい、と個人的には思うのだけど。
山にまつわる怖い話28