頭上から聞こえる甲高い声

俺の親父はキコリだ。
山で色々な変な現象にあうことは珍しいことではないらしい。
けど、一回俺が小さい時に、死ぬほど青ざめて帰ってきたことがあった。
そして困ったなぁ困ったなぁって、ずっと言ってた。
俺は気の強い親父が、何でこんなうろたえてるのか理解できなかったんだが…

親父はいつものように山でチェンソーで木を切っていたらしい。仕事は一人でやっていた。
エンジンの音に混じって、頭の上から一瞬甲高い音が聞こえたらしい。
んで、すぐにエンジン切ったんだが、周りに人がいるわけでもない。

それもそのはずで、その親父の行ってた山は標高が高い所にあり、人なんか誰も近づかない山。
針葉樹の森だった。
んで、親父は気のせいだったと思ったら、再び頭の上から甲高い声が聞こえたらしい。

「今夜はご馳走だぞ!!生贄は用意してあるか」とか、そこだけ聞こえたらしい。
で、声の響いた方を見たが誰もいない。
しかも、上から聞こえてきたらしい。
さすがの親父もビビッて、パニックになったらしい。
親父は大声でさけんだんだって。俺はチェンソー持ってるぞ!!!とか。

でも、反応は無し。
なんというか、この世のものではない感じがしたらしい。
親父は仕事を切り上げて、帰ろうとして、荷物を置いてあった川に戻ったらしいんだけど
そこで変なものがあることに気がついたらしい。

自分の持ってきた荷物の上にカエルとか虫とか鼠の死体が山になって積まれていたんだって。
そんで、離れた所にももう一つ同じような山があって、その山がどんどん小さくなってってたらしい。
それを見て俺の親父は直感でヤバイって感じたらしくて、荷物そのままにして車あるとこまで走って逃げて、家に帰ってきたらしい。

で、途中でサルの群れにあったらしいんだけど、なんか異様に皆がこっち見てたんだって。
サルは人きたら見るけど、逃げようともせずにじーーっと見てたから、異様に感じたらしいんだけど、その時は、そのまま家まで逃げ帰った。

で、家の駐車場に付いた時に異様な生臭さを感じて、もしや…と思い、来ていた作業着の匂いをかいでみたら、明らかに動物の尿の匂いで満ちていたんだって。
で、親父は自分の親父…つまり、俺の爺ちゃんからそういう話を聞いたことがあったらしくて、キコリの間で、そういうことがあったらすぐに服を燃やせって伝説があるらしい。
で、俺の親父はそれをすぐに燃やしてた。

それから、その山の標高の高い所には行くことが出来なくなってた。
しかも、山に行くのに猟犬を毎回連れて行ってた。
正直、あの親父がこんなにビビるなんて相当なことだと思うわ。
でも、家の爺ちゃんはその場所で死んでたって後で聞かされて、理由が分かった。
爺ちゃんも同じものを見たらしい。

そして、その山は一応霊山として祭られてる山で、神社もあるんだが、その神社には誰も人が近づかない。
というか、近づけない場所にある。
けれど、全く荒れてないらしい。

山にまつわる怖い話42

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