知り合いの話。
職場近くの小高い山に、森に埋もれるようにして小さな神社があるのだという。
以前その前を通り掛かった際、社の入り口に見覚えのある後ろ姿が見えた。
間違いない、親戚の叔父さんだ。何をしているのだろう?
話し掛けようと思い、車を路肩に停めて社内に足を進めた。
あれ? 境内には誰も居なかった。声を上げて読んでみても返事もない。
首を傾げて神社を後にする。
その夜叔父に電話する用があり、ついでに「あそこで何していたの?」と聞いてみた。
「何の話だ?」叔父はその日、あの社になど行ってないという。
勘違いだろうということで話は終った。
叔父はその後、一週間もせずに急死した。
脳溢血だったらしい。
それからしばらくして、やはりその社で知り合いのお母さんを見かけた。
おかしい。あそこのお母さん、今海外旅行している筈なのに。
その三日後に、その母君の訃報を聞いた。
旅行先で事故に巻き込まれたということだ。
今、彼女はその神社の前の道は極力通らないようにしている。
「関連があるとは信じていないけど、あそこで知り合いが見えたら嫌だから」
山にまつわる怖い話28