渓流釣り

同僚の話。

家族を連れて、山奥の峡谷へ観光に行った時のこと。
渓流を散策していると、途中で一人釣りをしている人がいた。
「何が釣れますか?」と聞くと「アマゴ狙いですよ」との返事。

彼はアマゴがどんな姿をしているのか知らなかった。
クーラーボックスの中を見ても良いと言われたので、子供と一緒に覗いてみた。

そこには見事な大きさの鰺と鰈、そして穴子と烏賊が何匹か収められていた。
鰺の口はまだパクパクと動いている。

思わず「えぇっ!?」と声を上げると、釣り師は怪訝な顔をして中を改めに来た。
自分のクーラーを覗き込んで、顎が落ちたような顔をした。

「え、なんで!?」と小さく叫んだ後、「あ、いや、何かの間違いですよ、間違い。うん。」と口にして蓋を閉める。
「そうですよね、間違いですよね」仕方なくそう返して、その場から立ち去った。
「凄いね、あの小父ちゃん」子供はそう言って顔をニコニコさせていた。

悪戯だったのかな、それにしては本人も真剣に驚いていた様子だったけど。
まぁ子供が喜んでいたので、良しとするか。
そう考えをまとめて、峡谷を後にしたそうだ。

山にまつわる怖い話28

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