友人の話。
彼は神社の氏子になっており、毎年年の瀬から新年に掛けて、社の世話をしている。
数年前、風が強くて石灯籠に火が点せない時があったのだという。
仕方ないやと諦めて、参拝の客を迎える準備に向かう。
年も明けた数時間後、参拝の人並みも一段落し、片付けに入った。
熾火に水を掛けて消し、社の外に出しに行った帰り道。
おや? 暗かった灯籠に、ちゃんと明りが点っている。
二つある内の片方にだけだったけど。
「あぁ、誰かが点け直してくれたんだな」
そう考え、少々バツが悪い思いをしていると。
いきなり、明りがフッと宙に浮かんで、フラフラと踊り始めた。
少しの間漂ってから、もう一つの暗い灯籠の方へ舞い降りる。
「・・・あれは普通の火じゃないな」
取りあえず手を合わせてから、仕事に戻ったという。
次の年からは、灯籠の穴を改良し、風が強くても火が消えないようにしたそうだ。
「思うんだけどね。あそこの社で見られる火の内幾つかは、普通の火じゃないかもしれん。まぁ御社に出る類のモノだから、悪いモノじゃないと信じてるけど」
山にまつわる怖い話36