東北辺りの山の中にある集落の話だけど…。
その集落から山中に入り、2つ3つ越えた所に不思議な場所があるんだ。
そこは一見、何処にでもあるような木とかが生い茂ってる普通の山林なんだけど、夏の終わり頃からその場所は異常な程にキノコ類が生い茂るんだ。
地面や朽木、生きてる木にまでびっしりってな感じに。
しかもその殆どが食用になるヤツ。
でも、集落の住人達はその山に入るのは10月に入ってから。
しかし10月に入ると生い茂ってたキノコはその数が急激に減り、収穫と言うほど取れなくなる。
何故9月頃に行って取らないのか?と聞くと、「その時期の山には神様が居て、その時にそこでキノコを取ってはいけない」との事。
まぁ、自分はキノコとかそんなに好きでも無いから取らないけどね…と笑って居たんだが…。
でも、やはり一面のキノコってのは興味があるので、絶対に取らないからと言う事で案内してもらった訳だが。
ちなみにその時は9月末で、ギリギリ見れそうだったから。
そんな訳で、集落の知り合いに案内してもらい、その場に辿り着いたんだけど。
話に聞いていた通りにびっしりと生い茂るキノコの山。
でも、その知り合いが言うには何だか少ないとの事…。
そしてよく見ると人が複数立ち入った形跡。
どうやら、密猟(?)されてるかも…って話になり、荒らされた形跡を追って山に分け入る事になった。
内心「面倒事になったな…」と思う。
知り合いは、見つけたらココは『私有地』(嘘)なので出て行くようにと言うつもりらしい。
しかし、入り込んだ人間がまだココに居る可能性は低い上に、もし密猟とかの常習犯で逆切れされたらこっちが危険なんだがなぁ…。
とりあえずそう説得し、携帯の電波が届く所まで戻って集落の偉い人に報告する事になった。
で、帰ってきた答えが…。
「昨日一昨日辺りから一台のワンボックスが近隣の村に停められたまま」
まさかとは思うがこの山に入ったかも…って訳で、もしそうなら調べてくれと。
更に面倒事に…。
再びその山に引き返して探す事になってしまった。
もしもの場合(遭難とか)が考えられるかもとの事だけど。
ぶっちゃけ、多少疲れるもののそれなりの体力があれば入れる山で、更に複数の人間全員が一度に遭難して動けなくなる可能性は低いと思いつつも協力。
正直密猟、良くてキャンプ愛好集団と予想しながら、踏み荒らされた場所を追いつつ奥に行くと…。
僅かに開けた場所に火を使った形跡、そして大量のキノコが入ったリュックを発見。
どう見ても密猟にしか見えない…。
しかし周囲に人影は見当たらず、密猟者が持ち込んだと思われる荷物はその場に置かれたまま…。
どうなってるんだ?と思いつつ、少し離れた場所の木陰に居た知り合いを見ると…。
「今すぐ引き返すぞ」
そう言って早足で山を降り出した。
探さないのか?と思ったが、仕方が無いので一緒に山を降り、電波の届く場所に辿り着いたと同時に知り合いは電話をかけると。
「…密猟者のようだったが、もう終わってた…」
「終わってた?どう言う事?」
そう聞く自分の質問に、知り合いは非常に微妙な顔で考え込むと…。
「なぁ、キノコの茎の部分って分かるか?」
シイタケとかマツタケの部分を思い浮かべて「分かる」と答える。
「あの木陰に、人の胴程の大きさと太さの茎が数本あったんだよ…」
「… … …」
引き返して見て見ようと思ったが、知り合いは本気で止めに入った。
「とりあえず、今日は帰るぞ。10月になってからもう一回見に行くから」
帰ったので後日、その知り合いから報告を受ける。
見に行った時には、そのキノコの茎はドロドロに腐れ落ちて既に原型どころじゃ無かったとの事。
そして行方不明扱いの密猟者は車の所有者から身元を調べるたら、県外の特殊な職業(ヤ○ザ構成員)らしいと。
地元のオジジとかオババに聞くと、その山に居るのは神とかと呼べるようなそんな大層なモノじゃなく、どちらかと言うと物の怪とかそれに近いモノとの事。
10月の出雲の神在月に持って行く茸を栽培(?)してるんだろうな…って。
じゃ、その栽培してる茸を盗難された訳だから、その密猟者は怒った物の怪に襲われて茸に?
茸の傘=頭って事?
宴の席の料理にその茸の傘が並ぶのか?と…。
山にまつわる怖い話48