夏冬に思い出す昔のこと。
当時は小中学生だったかな。
幼なじみの飼い犬が行方不明になったんだ。
その犬が生きたまま見つかることはなかった。
しばらく後に、線路に動物の前足が落ちてるのをたまたま俺が見つけただけ。
幼なじみの犬の足にあった特徴がそのまま残っていた。
子犬のころの骨折が原因で骨が曲がってるのと、毛色ね。
その足は友人宅の庭に埋められた。
足の上には墓碑代わりに木が植えられた。
その数年後の夏。
近所の住職が庭で草むしりをしていたのを手伝ったときだ。
何の草だか分からないが、かなり深く根を張ってるのがあって、俺や住職の力じゃ抜けなかったから地面を掘ったんだ。
そしたら根に絡みつかれるかたちで出てきたのが動物の足。
中型犬の前足のスネから下っぽい。
腐ってはいなかった。むしろ少し乾燥してる?
俺、その前足知ってたんだよね。
幼なじみの犬の足なんだよ。線路で見つけて、庭に埋めたはずの。
俺も住職もビビる。呼び出された幼なじみもビビる。
木を掘り返さなきゃ犬の足を取り出すなんて無理なのに、何故?
むしろなんで原型が残ってるの?って。
その足は、またちゃんと埋められた。
それ以降は変な場所で発見されたって話は聞かないな。
不可解な体験、謎な話~enigma~ 58