真っ赤な空

怖い話じゃなく不思議な話です。
特にこれといったオチもありません。あしからず。

3年程前になります。当時学生だった私は運送のバイトをしてました。
社員の方と二人で配達に回るんですが、その時に起きた出来事です。
大きな荷物を運び終え、ついでと渡された小包の配達に向かいました。
場所は都内にあるマンションです。かなりデカイとこです。

現地に着いて、私は小包を抱えて小走りでマンションのエレベーターに乗りました。
配達先は12階です。ボタンを押し、エレベーターが上昇するのを感じました。
途中、4階と5階の間くらいで突然エレベーターが止まってしまいました。
しかもグラグラ揺れているようなのです。すぐに地震だと思いました。

揺れ自体はすぐ収まったのですが、エレベーター内で地震というのは初めての経験です。
正直かなり怖くて、小包を持つ手がかなり汗ばんでいたのを覚えてます。
2~3分程でエレベーターが動き始めました。何事もなかったかのように上へ行きます。

後から知ったのですが、エレベーターは地震を関知すると最寄りの階で自動的に止まるそうです。
この時はなにせ初めてのことだったので、特に不審だとは考えませんでした。

ポーンと音が鳴り、12階に到着しました。扉が開いた時はやはりホッとしましたね。
ただ、本当に問題なのはこのあとに起こったことでした。

扉が開いて外に出た瞬間に、凄まじい違和感が私を襲いました。
違和感の正体は、世界そのものだったんです。

まず、マンションに到着したのは午後3時過ぎくらいでした。
エレベーターから下りて外を見ると、夏の夕方のように真っ赤なんです。
空が真っ赤な夕焼け空のようになっていました。
そして、街の様子が明らかにおかしいのです。何も動かず、何も音がしないのです。
影が濃く街を覆っていました。本当に不気味な世界で、私は悲鳴をあげてしまいました。

何が起こったのか分からず、頭が混乱したままでした。
私はすぐさまエレベーターに取って返し、1階へのボタンを連打しました。
特に問題もなく、滑るように降下を始めるエレベーターで私はうずくまってました。
ポーン、と音が鳴りエレベーターが到着しました。階を見ると5階です。

扉が開くと、サラリーマン風の方が乗り込んできました。
私がうずくまってるのを見てびっくりしたのか、大丈夫ですかと声をかけて頂きました。
私は必死に今見たものを伝えようとしましたが上手く言葉に出来ません。
すぐに1階に着き、付き添われるように表に出ました。
外は、先ほどの真っ赤な光景など嘘のように、午後の明かりが照っていました。

以上で私の話は終わりです。
私が見たもの、あの世界は何だったのでしょうか?
あれが白昼夢であれば、それはすごく安心出来るのです。
でも、どうしてもあれが白昼夢とは思えない。あれは異世界かもしれない。
パラレルワールドとか、私はあまり詳しくないのですが、きっとそういった類のものです。
あのままあそこに留まっていたら、一体どうなったのでしょうか…

不可解な体験、謎な話~enigma~ 59

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする