大勢の老人達

私の家の裏には老夫婦が住んでます。年に何度か娘さんが子供を連れて帰ってきてるようです。5歳くらいの男の子でこの歳にして既に夜型のようです。
(いつも信じられない時間、1時とか2時とかに声が聞こえてきますから。)

去年の冬休みもやって来てました。私が二時過ぎにお風呂から上がって洗面所の鏡の前に立ち髪を乾かしていると、裏の家からあの男の子の声がします。
よく聞くと泣き叫んでいるようです。

「あっち行ってよ~~」
そう言う言葉が聞こえてきました。何か起こられてだだをこねてるのかな?と思ったんですけど、いつまで経っても泣き続けているのでどうしても気になります。
鏡の横にある窓を少し開けて耳を澄ましてみました。

「見ないでよ~」
とか
「ばあちゃん助けてー」
といった事を叫んでいるのです。

何事かと思い覗いてみると、その家の庭に人がいるんです。
一瞬泥棒?!と思ったんですけどよく見ると老人です。泥棒には見えない。
あの家の人ではないし誰だろう?と考え、好奇心をそそられた私は洗面所の電気を消し、窓を更に少し開けて見ました。

するとそこには、大勢の老人達がいたのです。ほぼ庭一杯にいます。
全員が家の一階部分にある、おそらく居間の窓の方向を向き、一人ずつ代わる代わるその窓の中を覗いているのです。暗くて顔などは詳しく見ませんでした。
窓の向こうにはカーテンを少し開け、泣き叫ぶ男の子、それをおばあさんが困ったようになだめる様子が見えました。

老人が窓に近づく度に男の子は
「こっち来るな!」
と泣き叫んでます。
しかしおばあさんは全く何のことか分からないという風でした。

私は何だか怖くなりそっと窓を閉めてそのまま寝室へ行き寝ました。
次の日、私は昨日のことが気になり続けてました。
お昼を終えくつろいでいると、ゴミを捨てに出て行った母が裏のおばあさんと話してる声が、開け放たれた勝手口から聞こえてきました。

「それでねぇ、昨日は孫が急に泣き出して。寝ようと居間の電気消した途端、外に誰かいるって言うんで泥棒かと思ってみたら誰もいないんですよ。それでも孫は庭を指さして知らないおじいちゃんとおばあちゃんがこっちを覗いてるって泣き叫ぶもんだから、流石に気味悪くなってね…お祓いでも受けさせた方がいいかもしれないねってさっきも娘達と話してたんですよ。」

もっと詳しく聞きたかったけど話はそこで終わってしまいました・・・・。
今年もその男の子はやって来てます。相変わらず遅くまで笑い声が聞こえてきてますが、今年はまだ泣き叫ぶ声は聞こえません・・・・

ほんのりと怖い話32

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