壁の木目

16歳の頃、部屋にいた俺はミョーに体がだるくてソファーで横になっていた。
何をするでもなく壁の木目を見ていると人の顔に見えてきた。

こうゆう風に何かの模様が顔に見えたりするのは別段普通のことで、誰にでもあることだろうと思う。
俺もその時不思議にも思わず、その顔を眺め続けていた。

そのまま眺め続けていると、最初おっさんの顔だったのが、女の顔に変化した。
しかも、チラチラと視線を動かし俺のほうを見たりしている。
俺は不思議に思うとか恐いとかの感情は、その時いっさい無かった。
(おぉ、ずっと凝視してると唯の絵がアニメに変わるのかwww)
面白くてますます視線が離せなくなって来た。

今度は、口をパクパク動かし出した。
何かを喋っているようだが声までは聞こえない。
視線も俺のほうを見据えたままに変化した。

すると、段々女の顔が鬼のような形相に変化して行き、仁王様だか閻魔様かよくわからない、何か仏教系の代物に変わってしまった。
そして、仁王様だか閻魔様が開いた手をぬぅーっと俺のほうに突き出してきた。
(なんで壁から手が突き出してくるんだぁ!!??)

仁王様だか閻魔様の本体は二次元なんだが、突き出された手は三次元だった。
しかも、パースとか距離感とか無視した感じで手がドンドン大きくなり俺に近づいて来る。(やばい!やばい!このまま見続けたらやばい!!)

本能的にそう思った俺は必死に視線を外そうとしたが、なかなか外せない。
気がつくと俺の顔の三倍はありそうな手が俺の顔の直前まで迫ってきた。
とにかくパニックになりながらも必死になっていたら視線を外す事が出来た。

しばらく、恐くて壁のほうは見れずにそのまま固まっていた。
いつまでも固まっているわけにも行かず、恐る恐る壁のほうを見ると、そこにはもう何も無かった。

その後、本格的に体調が悪くなり入院&手術をする事となった。
今思うと極度の体調不良からくる幻覚だと思うのだけど、あのまま手を見続けていたらどうなっていたのだろう?

不可解な体験、謎な話~enigma~ 62

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