高校時代、私は電車通学をしていた。
電車は、一時間に一回しか来ないし、路線が下りか上りかの二本しか無い田舎だ。
途中に無人駅があった。
そこで降りたことは無いが、電車からはバス停のような木の小屋が見えた。
ホームに屋根は無く、青色のベンチがぽつんと置いてあるだけ。
ある日、そのベンチに女の人が座っていた。
無人駅から乗ってくる人はほとんどいなくて、しかも夏なのにピンクのコートを着ていたからかなり目立っていた。
次の日も、その女はピンクのコートを着てベンチに座ってた。
それからは毎朝のように見かけるようになった。
いつもツバの広い帽子をかぶっていて、電車が来ても微動だにしないし、なんか気味が悪いね、なんて友達と話した。
帰りにも気になって見てたけど、帰りに見かけたことはなかった。
服は途中ピンクから白だったり、グレーだったり変わったけれど、ずっと冬服だった。
毎日のことだったんで、女の事はだんだんと気にもとめなくなっていった。
ある日、女がノースリーブのワンピースを着ていたので驚いてジロジロ見てしまった。
だけど、よく見てみると腕とか足とか変なんだよね。
あっ、と思う前に鳥肌が立った。
その女はマネキンだったんだ。
驚いて一緒に通っていた友達に話すと、怖い話として学校中に広まった。
でも、どういう訳か次の日からマネキンは来なくなってしまった。
誰がなんの目的で毎朝運んでいたのか、たまに着替えもしてたし、考えると怖い。
不可解な体験、謎な話~enigma~ 62