学校の修学旅行で泊まった宿の従業員さんから聞いて、ちょっとほんのりした話。
その人、仮にHさんとします。
Hさんが働く宿は、スリッパの着用が定められていました。
泊まりにくる学生にもそれを適応していたため、いつもたくさんのスリッパがありました。
とあるシーズンオフ。
Hさんは買出しから帰ってきて外履きからスリッパに履き替えようとしました。
すると右の親指にごり・・・と石のような硬い感触が当たります。
スリッパを脱いで手をつっこんでみると、小指の爪ほどの石がありました。
その石は緑色をしていたそうです。
その時はなんとも思っていなかったのですが、その日から石は、毎日スリッパのどちらか片方に入っているようになりました。それも決まって緑色。
誰かのいたずらかなあ、と呑気に構えていたHさんですが、さすがに一週間も続くと不審に思ってきました。
他の従業員に問いただしてみても、誰も知らないの一点張り。
しかも、緑色の石は微妙にですが、日に日に大きくなっていることに気がつきました。
石が入っているようになって約10日後。
その日の石は、親指の爪ほどになっていました。
その頃には、Hさんもスリッパを履く前に一旦手を突っ込んで確認していました。
石が入っているのは、Hさんが履くスリッパのみ。
しかし、とくに生活に支障はないのでHさんは気味悪がりながらも仕事を続けました。
毎日でてくる緑の石は全て、隣接している森に捨てていました。
緑の石がでてくるようになって二週間。はた、と石は出現を止めました。
Hさんはやっと安心した心地で、それからの一ヶ月を過ごしました。
石の存在を軽く忘れかれていた時。
またもや足にごり・・・と石の感触がしました。
Hさんはまたか、と思いつつかつてのように手を突っ込みました。
しかし、石はどこにもありません。
Hさんはスリッパを逆さにし、乱暴にふりました。すると
ごと・・・と、明らかにスリッパの質量を超えた拳大の緑の石がでてきました。
それは丸々としていて、地面に落ちた後
てん、てん、てん、と弾んで外に出て行ったそうです。
Hさんは慌てて追いかけましたが、すぐに見失ってしまいました。
特に害はなかったけれど、Hさんはそれから自宅から持ってきたmyスリッパの着用を認めてもらうように主人に泣きついたそうです。
そしてそれは認められ、自宅から持ってきた藍色のスリッパを履いて、Hさんは今も働いています。
ほんのりと怖い話38