空耳

小学生くらいまで自分は耳が遠かったんだ。
当時、両親は共働きで兄は中学で部活やってたから、俺は昼間一人で留守番してたことが多かった。
そうしていると、なんだか名前を呼ばれているような気がして、いっつもわざわざ玄関を覗き込んで、誰か帰ってきてないか確認してたんだ。

俺にはそれが空耳だって言うのが分かっていたから、心霊体験とは思ってなかった。
けど、その空耳が毎日のように続くと玄関まで覗きに行くのが面倒くさくなって、聞こえても無視するようになった。
それでいつの頃からか、居間にあるテレビが映ってないときは鏡みたいにガラスが反射して、玄関のほうがちょっとだけ見えることに気付いたんだ

で、その日も空耳が聞こえたんでテレビを鏡代わりにして玄関のほうを見たんだ。
すると玄関のドアが開いていて光が家の中まで差し込んでいるのが見えた。
そして玄関の外から見たことのない女の人が入ってこようとしてたんだ。
俺は慌てて玄関を直接覗き込んだんだが、そしたら誰もいなかった。

小学5年のときに耳の手術して、それ以来耳は良くなり、代わりに空耳は聞こえなくなったんだが、不思議だったな。

ほんのりと怖い話38

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする