切り株の下の穴

小学3年生の時の事

その年の夏休み、虫取りに夢中になっていた。
たしか自由研究が昆虫採集だったと思う。
いつでも珍しい虫がいないかと、うろうろあちこち探しまくっていた。

その日も昼過ぎに、虫取りアミを持って近くの山へ昆虫採集に行った。
色々探して、虫カゴの中にも何匹か獲物を入れていた。
そのうちに、近くに腐った木の切り株がある事に気が付いた。

クワガタの幼虫でもいるかなと思い、近付いてみると結構大きな切り株だった。
切り株の下に隙間があり、何だろうと思って覗くが良く分からない。
近くにある手頃な木の枝を差し込んで、テコの要領で力を入れると、小学生でも簡単に動かせた。

ゴロンと切り株が転がった後には、大きな穴があった。
大人でも体が入りそうな穴だ。
「うわあ・・・すげえ」と思い、穴の縁に座り込んで中を覗き込んだ。

真っ暗で、底があるのか無いのかすら分からない。
尚も良く見ようと、穴の縁に手を掛け、頭を突っ込んでみた。
その時、背中をポンと誰かに押された。
俺は、穴に中に頭から落ちていった。

その落ちている感覚は今でも鮮明に覚えている。
「あ~死ぬ~・・・・」と思いながら、延々と落ちていった。
段々と意識が無くなったんだろう。

ハッと気が付いた時には、近くの川原に寝ていた。
何がなんだかわからない。 虫取りアミも虫カゴもない。
良く分からないまま、再び山に入り、虫取りアミと虫カゴを探した。

切り株のそばに虫取りアミはあった。
切り株も転がしたままになっている。
穴も確かに開いている。ただ、深さは30cm程のものだ。
棒を突っ込んだり、手で掘ったりしてみたが、やはり底がある。

落ちた穴は一体なんだったんだろう。
虫取りアミはあったが、虫カゴは依然として行方不明のままである。

山にまつわる怖い話52

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