桜の下に死体が埋まってるとかよく聞くが、誰が言い出したんだろな。
まぁそんな事はどうでもいい。ひとつ俺の話を聞いてくれ。
俺が子供の頃、両親が離婚して所謂、母子家庭だったのね。
女手ひとつで、とても苦労したと思うけど特に不自由も無く生活出来てた。
参観日とかは確かに寂しかったが、家に帰って暫くすればちゃんと帰ってきてくれるし特に気にしてなかった。比較的近くにじぃちゃんばぁちゃんも居たし。
中学2年辺りから、ちょっとやんちゃなグループと付き合い始め、タバコとかでよく保護者召喚とかくらってた。
今思うと本気で申し訳無いと後悔するw
んで、まぁ何とか高校行けるようになって遊ぶ金欲しいしバイトするようになった。
バイトにも慣れ始めた頃、普段シフトが被らずあまり見掛けないバイト先の年行った先輩(仮にA)とシフトが被るようになった。
同年代の奴と「あの年でバイトは辛いなw」とか話してたのが聞こえたのか、ふと気が付いたらジーっと見られる事が有った。
ある日、バイトの飲み会でAと席が近くなり前の事が有って気持ち悪かったけど「一応先輩だし良い顔しとくかw」なノリで話してた。
よく見れば見るほど貧相なんだわこれがw
こんなのが親父だったら泣くわwって感じに。
話ってか愚痴を聞くうちに知りたく無い事が色々わかった。
丁度俺くらいの息子が居た。離婚して今は独り。後悔している。悪夢見がち。
そのときは俺の家によく似た家庭なんだなと思った。
先に言うが、これが親父だった。
よく考えたらAって俺の旧姓で、ちょっと珍しいからあんまり居ないのね。
母方の姓で居たのが長かったのと、聞きなれてるからよく居る姓だと勘違いしてたのが原因。
顔はあんまり覚えてなかったしね。
で、飲み会を境に良い迷惑だが微妙に仲良く?なったw
で、それからをはしょると
次第に似すぎに思う→もしや?→母親に聞く→ビンゴ→向こうは先に分かってた→終に互いに認知→俺気まずい→バイト先変える
暫くたったある日親父から連絡が有った。寄りを戻したいだの何だの。
今まで母親を一人にしてたのに急にそんな事言われてもなぁって思い取り敢えず話を聞きに行った。
会ってみると驚いた。雨の日に放り出されたチワワかwwってくらいゲッソリしてた。
それで可哀想とか思ったのか相手の口が上手いのか何と無く母に会わせることにした。
んで、母も同じ感じなのか何か気が付いたら一緒に住むようになった。
日に日に丸々として行く親父。
口数はそんなに多くはないが地味にちゃんとした家族してる気がして俺は嬉しかった。
しかし1年すると、それは大きく姿を変えていた。
うちで暮らすようになってから働くのをやめ、1日ゴロゴロしてたまにふらっと消える親父。一人増えた分を補うために必死な母。少しでも足しになるように遊ぶのを辞めた俺。
最初感じていた幸せが音をたてていた。
2年目。卒業の年。家計の為に就職を考えてた。
その頃の親父は初めて話した時の面影は一切無く、酒浸りでは無いもののDVや怒鳴りなんかが日課になっていた。迷惑な日課だ。
そんな親父みたいな人生を送りたく無いと本気で思ったし、母やじぃちゃんの後押しも有って大学を受けることにした。
バイトも辞め学校→家→必要なこと以外勉強という日が続いた。この時ばかりは彼女が居なくて良かったと思ったw
親父の妨害がちょこちょこ有ったが絶えれた。お前みたいにはならないって一心で。
丁度今ごろの夏休み。急に親父が大人しくなった。ふらっと消える事も無くなった。だが奇行が増えていた。壁と話してたり夜中泣き喚いたり。
俺と母はまともに寝れず疲れもピークで、俺は初めて本気でキレた。
殴り会いとかも覚悟してたんだが、終始ニヤニヤして気持ち悪かったが親父はあっさり引き下がった。気持ち悪いのは前からか。
その日の深夜。俺が寝る準備してると親父達の寝室がゴソゴソ五月蝿かった。仲直りの営みワロスワロス。
翌朝、二人とも居なかった。母は俺が起きる前にいつも出勤してたからいつも通りだが、昼まで起きない親父が居ない。
改心してハロワかぁ?wとか考えて2年前みたいな環境に戻る淡い期待をニヤニヤしながら抱いてた。
家に帰っても誰も居なかった。ってか居るのはいつも親父だけなんだが、その親父も見当たらなかった。
「遅くなるなら連絡ぐらいしろよな」とか思いつつ久し振りの独りだけの晩飯を味わった。
「あんな奴でも一緒に飯食う人が居るだけで違うな。本当に改心してるなら、ちゃんと家族らしく接するのも悪くないな。」とにやけつつトンコツラーメン啜る俺。
どうみてもキモいです。本当にry。その晩、二人とも帰ってこなかった。
今思えば母が連絡寄越さないのはおかしかったが、その時の俺は頭に花咲いてたし「二日連続で今度は泊まりっスかwww」で放置して就寝。
深夜、金縛りに会った。「ちょwwwまじかww霊とかマジ勘弁ww」って感じだったけど怖いの半分眠いの半分でぼーっとしながら眼を薄く開けた。
死んだ親族が乗っかってるとかよく聞くが、何か親父が乗ってた。
「親父死んだのかー」妙に冷静納得してそのまま寝かけた。
首に生暖かい感触。締め付ける息苦しさ。微睡みが一瞬で消えた。苦しい。目の前には親父が居た。にやけながら。
必死に抵抗して払いのけた。そこからはよく覚えてない。気が付いたら親父が転がってた。
弱々しく息を吐く親父。「死なせたら面倒になる」頭が麻痺してたのだろうか、やけに冷静だった。
「親父?」顔が変形した親父のようなソレは息も絶え絶えにトラブルで知り合いを殺した事、たまにそいつが家をうろついてる事、母の首を締めたら動かなくなった事をうわ言のように呟いた。
最後に今迄の弱々しさが嘘のように「お前が何をしようが俺の息子だ。人殺しの息子だ」と断末魔を吐いた。
俺は正当防衛って事になった。母は裏の川原で見付かったらしい。あとは事情聴取や葬式で忙しかったが俺はじぃちゃんの家に引き取られ淡々と受験に向けていた。
勉強で忘れようとしたのか麻痺してたのか俺の中の何かが死んだか或いは全部か。
高校卒業前、入試結果発表の日。
桜が咲いていた。
当然だ。誰に何が有ろうと春になれば桜は咲く。俺の努力は無駄だった。アレの最後の言葉通りだった。
心なしか、今年の桜は例年より紅く見えた。
以上が俺のほんのり怖い作り話。だと良いな。
不思議なのは言い回しは考えたりしたけど内容は何故か急にスラスラ頭に浮かんだ事。
主人公が実在しなければ良いけどな。
ほんのりと怖い話41