去年、祖父が団地の階段から落ちて亡くなった。
みんな泣く暇も無いくらい慌てて、通夜やお葬式の手配をしつつ、祖父の友達に連絡をした。
祖父は囲碁が生きがいみたいな人で碁仲間が沢山いた為、私は碁会所に電話をかけた。
すると、電話を取った人は笑いながら
「嘘だ。だって○○さん(祖父)、今そこで××さんと打ってるよ」
と言って信じて貰えない。
とにかく本当なんです、と説明して一度電話を切った。
その後、通夜とお葬式には多くの碁仲間が来て下さった。
みんな口を揃えて
「○○さんは確かに碁会所に来た」
と言う。
そんなはず無いのに、と碁仲間の人達と話していると、電話の時に打っていたという××さんが話に加わってきて
「そういえば○○さん、今日は妙な事言ってた。俺が途中で降参するのはいつもの事だけど、その時に『最後まで俺の勝ち越しだ』って。まだ勝ち越しと決まったわけじゃねぇって言い返して一端トイレ行って、戻ったら○○さん、どこにもいなくなってた」
と語った。
亡くなった日、祖父は××さんと打つ約束をしていて、それで碁会所に出かける途中で階段から落ちたらしい。
囲碁を打っていれば食事も忘れるような人だったから、死んでまで対局の約束を果たしに行ったんだろう。
不可解な体験、謎な話~enigma~ 83