蜘蛛に身を代えて

従兄弟が自殺したんだ。
難病というよりは奇病を苦にしたものだと思う。
詳しくは書けないけど、結構レアな病気らしくて、普通に生活出来るけど完治不可。
ビジュアル的に、人と、特に異性とは接触し辛くなるって感じの病。
鬱気味で、酒に溺れて、伯母一家に散々な迷惑をかけて自殺したんだ。

ウチの故郷には、通夜の場に、亡くなった当人が蜘蛛に身を代えて出てくる、という言い伝えがある。
地元の人間なら、誰でも知っている言い伝え。

通夜の晩、坊さんの読経が終わり、ちょっとした挨拶が始まった時、大きいアシダカ姐さん(アシダカグモ)が出たんだわ。
かなり大きかったんでビックリしたけど、従兄弟が最後の挨拶に来たのかなと、しんみりした。

次の瞬間、伯母がスッと動くと素手で蜘蛛を捕獲、そのまま握り潰した。
あの時の、無表情、絶対に忘れない。

ほんのりと怖い話59

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