中学生のころ両親が離婚して田舎に引っ越した。
母と姉と3人暮らしだった。
ボロアパートの3DKに住んでいた。
引っ越したとこは治安の悪そうなさびれた町でよく下着とか盗まれて嫌だった。
母は夜遅くまで仕事、水商売してる姉とは仲悪かった。
いつも夜は一人で過ごしてさびしかった。
ある日の夜、自分の部屋で寝てるとき、部屋のふすまを開ける音がした。
姉はよく勝手に入って物を借りたりする人だったので、「ああまたか」と思って寝ぼけたふりして布団を頭までかぶった。
なんかじっと私を見ている気配がする。
「気持ち悪いな」と思ったけど、寝たフリしてた。
姉は部屋をしばらくうろついていたが、しばらくして、私の頭の上を跨ぎ部屋を出て行く気配がした。
私はやっとでていったかと思いほっとすると、そのまま眠ってしまった。
次に目が覚めたとき、外はまだ暗かった。
トイレに行きたくて部屋を出ると、台所で派手な格好した姉が豪快に顔を洗ってた。
「まだ起きとったん」と姉に言うと姉は「今帰ってきたばっかやから」と酔ったかすれ声で返事をした。
時計の針は午前4時をまわっていた。
あれ、と思いつつも酔っ払いの言うことだからと無視してトイレにいった。
トイレから戻ると、姉が「紅茶飲むか」と言ってきた。
マグカップ受け取りながらふとベランダ見ると、母が洗濯物干してるようだった。
姉がうるさくするから起きちゃったのかな、と思った。
「お母さん」と呼びかけたが、人影はぴたっと動きを止め、微動だにしない。
直後、隣の部屋から「うーん」と母の寝ぼけた声が聞こえてきた。
凍り付いてベランダを注視する。
姉が「誰?」といった瞬間、人影はすーと音もない早歩きでこちらに向かってきた。
全身黒ずくめで、ふざけた仮面をかぶってた。
姉はとっさに私をかばう体勢をとったけれど、黒ずくめは私たちには見向きもせず、そのまま玄関まで直進して悠々と出て行った。
ばたん、とドアの閉まる音。
その場で呆然となっている私を置いて、姉はすぐに男を追いかけていった。
けどすぐに戻ってきて、「どこにもおらん……」とつぶやいた。
その後すぐ警察に電話したけど、犯人はつかまらなかった。
警察はあまり熱心に調べてくれなかったけど、引越しまで毎日巡回には来てくれた。
いったいそれまで何回、あの男に家に上がられていたのだろうか、それを考えるとぞっとする。
あれ以来、なんとなく家族の結束が強まったはせめての救いです。
姉との会話も増えたし、母も夕飯までに帰れる仕事についてくれたし。
それにしても女だけの暮らしは本当に危ないですね。
皆さんも気をつけて。
ほんのりと怖い話61