理想の物件

大学2年生の時、今までは実家通いだったけど一人暮らしすることになったので、部屋を探しに賃貸のお店に行ってみた。
大学近くで7畳あってセパレートでキッチン広め家賃4万円代。
私の希望はこれで、とても理想が高いものだった。
当然のことながら、そんな物件はないに等しい。
担当のお兄さんも呆れた顔でいろいろ物件を紹介してくれるのだが、頑として妥協しない私。
すると、「じゃあこれはどうでしょう」と担当者じゃないお姉さんがある物件を勧めてきた。

その物件は私の希望するそれと同じで、しかも築も浅く角部屋だった。
その上、男性階と女性階に分かれていてオートロック。
安全面もばっちりだし、外観もおしゃれだった。
やっぱり最後の方に出してくる物件はいいヤツなんだなと思いながら、二つ返事でその物件を借りることにした。

入居してから、管理人が部屋の具合を確かめに何度が訪れることがあった。
一人暮らしを始めたばかりの私は「なんていい管理人さんなんだ」と安心した。
その上、朝大学へ向かう時、エントランスや廊下を掃除している管理人を見ることが多かったので「この物件は大当たりだな」なんて思っていた。

ただ、とても不思議だったのは女性入居者が圧倒的に少ないこと。
こんなにいい物件なのになんでだろうと不思議だったが、じきに入居してくるんだろうなって思った。

事が起こったのは入居してから1ヶ月ほどたった頃。
その日は講義が休講だったのにも関わらず登校してしまい、損をしたと思いつつ帰宅した。
時間は午前10時ぐらいだったと思う。
カギを挿して扉を開けようとしたけど、なにか違和感がある。
ひょっとして、とノブを回すとカギが開いていた。

カギかけるの忘れた?と思ったけど、私の靴じゃない靴が玄関にあったので驚いた。
部屋に管理人がいた。
今日管理人来るって話あったっけ?え?どういうこと?と動転する私。
管理人も驚いたのか、「早かったね、今日は講義じゃなかったっけ?」と話してかけてきた。

「休講だったんで…」「そっかー。ちょっと部屋を見させてもらってたんだ。綺麗に使ってるねー」
そんな会話をしつつ、管理人退散。私呆然。
そういう日だったんだ、私が忘れてただけ、と自分に言い聞かせていたけど、それから下着はなくなるわ、バス用品はなくなるわで怖くなって部屋を出た。

もう大学を卒業して3年経つ。
この前、サークルの現役・OB親睦会があって、後輩達から「あのアパートの管理人が捕まったらしい」って話を聞いて思い出したので投下した。

ほんのりと怖い話63

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