子供用プール

自分が10歳くらいの時の話。

母と妹と叔父と一緒に屋内プールへ出かけた。
そこは一般用、少し離れたとこに子供用、幼児用と3つのプールがあって、幼い妹は母が見ていて、私は子供用プールで叔父に泳ぎ方を教えてもらってた。

小一時間くらいの後、叔父は一般用へ泳ぎに行き、母と妹もどこかへ行ったようで私1人が子供用プールでちゃぷちゃぷ泳いでた。
1人でヒマになったから、隣接してる幼児用プールをふと見たんだ。
間に柵があって、深さがちがう造りになってんの。

今日はちっちゃい子誰もいないんだな~なんて思ってたけど、よく見るといた。
大人の男の人が、幼児用プールの中でうつ伏せに浮いてた。しかも背中にはでっかい傷痕がある。
今でこそ不審者にはとかく敏感な世の中だけど、この時はまだそうでもなかったし、鈍感な子供だった自分は「こんな人もいるんだな」としか思わなかった。
その男の人はしばらくその体勢だった。

それからフツーに家族と合流して何事もなく家に帰ったんだけど、あとあと考えると異様さに気づいた。
あの人たった1人で何してたの?
幼児用プールの深さって、大人の脛辺りだぞ。
しかも息継ぎしてる様子を一度も見なかった。
ジロジロ見続けてたわけじゃないから、私が見てない時にしてたかもしれないけど…

監視員だって数人いるはずの場所なのに、注意されてるところも見なかった。
彼はいたって静かなもんだった。
たしかいつの間にかいなくなってたと思う。
私は彼のうつ伏せの姿だけを見た。
背中の大きな傷痕がとても印象的だった。
母と叔父に聞いてみたけど、そんな人いたの?ってかんじだった。

彼がただの変な趣味の人だったのか、オバケの類いだったのかは永遠の謎。
当時は何も感じなかったけど、今思い出すとほんのり怖い体験。

ほんのりと怖い話137

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