老人が入院した。
末期癌だった。
医者は家族を呼んだが、誰も来ない。
「あの人は村八分だから」と看護婦は言った。
彼は憤慨したが、彼女もその理由は知らなかった。
ある日、老人は意識を取り戻し、彼に言った。
この村には山が二つある。それぞれ神社が建っていたが、今はひとつしかない。
そこまで言うと、老人は再び昏睡し、三日後に死んだ。
町は老人を共同墓地に埋葬するのを拒否し、川辺で火葬にするとその場に埋めた。
彼は、町の上役に尋ねた。彼は何をしたのか、と。
あいつは山の神を殺してしまったんだ。
上役は一言、そう吐き捨てた。
山にまつわる怖い話9