知り合いの話。
戦争が終わってすぐ後の頃だ。
その小父さんは仲間と二人で闇市の仕入れをしていた。
毎朝早くにリヤカーで峠を越えていたのだが、ある朝狐と出くわした。
相棒が石を投げて追い払ったのを見て、小父さんは化かされるぞと注意した。
昼時に相棒が弁当を食べようとすると、弁当箱の中は空になっていた。
ほら見ろ、化かされた。
そう言って小父さんは、半分だけ分けてやろうと自分の弁当を広げたそうだ。
小父さんの弁当箱の中身は、きれいに半分だけ食われていた。
山にまつわる怖い話3