くつろぐ牛

友人の話。

夜の峠道を車で走っていた時のこと。

いきなり誰もいない後部座席に、何かの気配が湧いたのだという。
その道は出るという噂があったので、思わず緊張してしまったそうだ。
嫌だったが、恐る恐るルームミラーを覗き込んだ。

後部座席一杯に、大きな牛がくつろいでいた。
最初は全体が目に入らず、牛だとは分からなかったらしい。
仰天して振り返ると、そこには何もいなかった。
しかしルームミラーには、相変わらずシートを舐めている牛が映っている。
どうしたらよいか分からず、そのまま車を走らせた。

峠道を下りきる頃、ふっと気配が消えたのだという。
ルームミラーには既に何も映っていなかったそうだ。

山にまつわる怖い話4

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