雪山の先導者

先輩の話。

大学生の時、部活で冬山登山に参加した時のこと。

避難小屋の近くで厳しい吹雪となり道に迷ったのだという。
皆はもう生きた心地もせず、雪中で強引に野営するかどうか決めかねていた。
その時、誰かが道の先でライトを振るのが見えた。

先輩たちが声を上げて手を振り返すと、まるでついて来いというように歩き始めた。
助かったとばかりに後を追った。

いくら足を速めても、なぜか先導の人影には追いつけなかった。
女子の一人が奇妙なことに気がついた。
雪の上には、その人影の歩いた跡が残されていなかったのだ。

皆が黙りこくっていると、やがて小さいが明かりが見えてきた。
避難小屋の明かりだった。
先導していた影は、いつの間にか消えていた。

その人影がそこで遭難した人のものかどうかは分からなかったが、後日先輩たちはルート途中にあった遭難者慰霊碑に献花しに行ったのだそうだ。

山にまつわる怖い話5

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