舞台

友人の話。

人気のない山道を一人で縦走していた時のこと。
尿意を催したので、側の林に入り用を足したのだそうだ。
ほぉっと緩い息を吐いていると、いきなり目の前の繁みが分かれた。

その場にそぐわない、長い髪の綺麗な女性が現れた。
彼女は裸にバスタオルを巻いただけの格好で、素足にはサンダルを履いていた。
良い香りが漂ってきて、頭が真っ白になりそうだったという。

彼女に続いて、髭面の男性が繁みから出てきた。
二人は「こんにちは~」とにこやかに挨拶をし、爽やかな顔で山道を下っていった。
彼はポカンと口を開けて見送ったそうだ。

半年後、彼は二人に再会することになる。
彼の友人が所有していたAVに出演していたのだ。
舞台はまさにあの山中だった。
「撮影の直後だったんだ」彼は変に納得して感心していた。
そのビデオの持ち主が誰だったかというのは内緒だ。

山にまつわる怖い話6

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