引っ掻いたような傷

同僚の話。

彼の知り合いに、左官の仕事をしている人がいる。
腕は確かで、泥工と呼ばれる類の仕事は何でもこなす。

その人は若い頃に何度か、火葬場の窯の修繕仕事をしたことがあるという。
釜の内側はかなりの高熱に晒されるため、痛みやすいのだそうだ。

ところが、ある火葬場の窯だけは様相が違った。
まるで鋭い鍵爪で引っ掻いたようなひどい傷が、窯の内面にびっしりとあったのだ。
しかも行くたびに、新しい傷が増えていた。

仕事とは言えそこには行きたくなかったな、と彼はしんみり言っていた。

山にまつわる怖い話6

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