アメリカで山岳ガイドに聞いた話。
ある山脈の奥深くに、不思議な穴があるのだそうだ。
それほど大きくはないのだが、深さはかなりあるようだという。
生い茂った大木の陰になるので日の光も差さず、底が見えた例はない。
ある時、たまたまこの穴の側で野営をした流れ者がいたのだという。
夜になり寝る支度をしていると、穴から淡い光が漏れてくるのに気がつく。
興味をそそられ覗き込んだ彼の目に映ったのは、穴の中に広がる満天の星だった。
さては穴の奥には水があって、水面に星空が映りこんでいるんだな。
そう考えた彼は手近な石を何個か、穴の中に抛ってみた。
石は見る間に小さくなり、星空の中に吸い込まれて消えた。
しかし、着水する音はいつまでたっても聞こえない。
急に落ち着かない気がして、野営地は穴が見えない場所にずらしたそうだ。
ガイド自身はまだその穴を見たことは無く、一度見てみたいと言っていたという。
山にまつわる怖い話6