後輩の話。
大学の卒業旅行で、北海道の山にスキーへ行ったのだそうだ。
地元とは桁の違うスキー場の広さに感動したらしい。
ゲレンデとゲレンデを結ぶ長いリフトに揺られていると、遥か下の谷に目がいった。
進入禁止の地帯にスキー跡が残っている。まだ新しい跡のようだ。
しばらく雪上の跡を追っていくと、やがてぼっこりとした窪みにつながった。
すぐ横には折れたスキー板が突き立てられていた。
「さては転倒したな」面白がって見ているうちに、おかしなことに気がついた。
転倒までの痕跡は克明に残っているのに、そこから出て行った跡がどこにも無い。
窪みへのスキー跡を除けば、あたりはまだ踏み荒らされていない新雪のままだった。
このスキーヤーは他の場所へ、一体どうやって脱出したのか。
気になって次の日も同じリフトを渡ったそうだが、折れたスキー板は既に見当たらず、場所を特定することすらできなかったという。
山にまつわる怖い話7