知り合いの話。
高山植物の写真を撮りに入山していた時のこと。
ある山奥の沢で、それまで見たことの無い白い花を見つけたのだという。
どうやらランのようだが、野生ランにしては花が大きく、かつ美しい。
間違いなく新種だ、と興奮して撮影しまくった。
いけないと知りつつも、持って帰ろうと掘り起こし始めた。
すると土の中から球根のようなものが姿を現した。
球根?ランではないのか、と土を払いのけていると異臭がした。
球根に見えたものは、小さな猿の干からびた亡骸だった。
驚いて取り落とした時、自分がその花の群生地に侵入していることに気がついた。
他の花々がまだ咲いていなかったので、それと気づくのが遅れたらしい。
急にその土地から凶々しい印象を受けた彼は、後も見ずに逃げ出したという。
撮影したフィルムはすべて処分したそうだ。
山にまつわる怖い話8