樹海に誘われる

知り合いの話。

仲間と一緒に、ある有名な樹海へ出かけた時のこと。

彼は皆とはぐれてしまい、一人緑の中をさまよっていた。
少し開けた場所を見つけた彼は、少し休もうとそこに踏み込んだ。

腰を下ろそうとしたその時、気がついた。
広場の隅に、ひどく傷んだ首吊り死体がぶら下がっていた。

慌てて森へ引き返し、正しい道を求めて足を速める。
やがて開けた場所に出た。
さっきと全く同じ場所だった。
死体もそのままぶら下がっていた。

それからかなりの時間、樹海の中を歩き回ったが、いずれも同じ場所に出てしまったらしい。
精も根も尽き果てて座り込んだ耳に、彼を探す仲間の声が聞こえた。
無事に合流できた時、彼は不覚にも泣いてしまったそうだ。
樹海に詳しい人から「それは誘われていたんだ。助かって良かったな」と言われたのだという。

山にまつわる怖い話9

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