友人の話。
事故の多発する峠道を下っている時のこと。
片側は切り立った谷になっているのだが、いきなりそちらの窓が明るくなった。
続いて、ドーン!という音がする。
何事かと向けた目に、焔の花が広がった。
空一面に盛大な打ち上げ花火が炸裂していた。
見事な花火だったようで、友人はしばし目を奪われたらしい。
我に返ると、ガードレールに接触する寸前だったという。
慌ててハンドルを切り事なきを得たが、その途端、空に広がっていた花火が掻き消すように消えたのだそうだ。
「綺麗だったけど、傍迷惑だよな」友人はそう言っていた。
彼の話の花火が、その峠で事故の多い原因なのかどうかは不明である。
山にまつわる怖い話9