友人の話。
ツーリング仲間と二人で林道を走っていた時のこと。
夕暮れになりそろそろ野営地を探そうかと考えていると、なだらかな谷間に作られた小さな集落に出たそうだ。
夕餉の支度をしているのか、各家から煙が上がっている。
窓に映る明かりが揺れているのは、今どき蝋燭でも使っているのだろうか。
広場でもあれば野営させてもらおうかと、彼らは集落に足を踏み入れた。
その途端、すべての家の明かりが同時にパッと消えた。
それがあまりに唐突だったので、二人はひどく動揺した。
急に薄闇が、その濃さを増したかのように思える。
即行で集落内を走り抜けた。
しばらく走ってから振り返って見ると、まるで何事もなかったかのように、集落には再び明かりが灯されていたそうだ。
山にまつわる怖い話9