知り合いの話。
彼は猟を趣味にしており、血統の良い猟犬を飼っている。
ただ、この猟犬がかなりのうっかり者で困っているのだそうだ。
鴨撃ちをしようと、近場の山へ出かけた時のこと。
彼が見事に鴨を撃ち落とすと、間髪を入れず愛犬が獲物を拾いに走り出す。
しばらくして無事帰ってきた犬は、咥えた物を彼の前で落とした。
どこで何をどう間違えたのか、それは鴨ではなかった。
強いて言えば、子供の上腕部に似ていた。
緑色で、水掻きみたいな膜がついていたが。
何かで斬り落としたかのように、断面はきれいだった。
それを見た彼は、後も見ずに車まで走って逃げた。
犬が嬉しそうに尻尾を振りながら、彼の後をついてくる。
その得意げな顔を見て、思わず悪態をついた。
今怒っても、何で怒られているかわからないだろうなぁ。
聞くと、十回に一度は、獲物の代わりに変な物を拾ってくるらしい。
その拾い物のせいで、大変な目にあったこともあるという。
しかし、彼は愛想を尽かすこともなく、今もその犬を連れて猟に出かけている。
山にまつわる怖い話10