中学生の頃だったかなぁ。
少し蒸してきた時期だったから梅雨に入りたてだったのだと思う。
榊をとって来いと親に言われて、裏の森に採りに入ったんです。
どこに榊が有るかはたびたび採りに行かされていたから迷うこともなく、獣道に毛が生えた程度に家の者達に踏みならされた小道を歩いて榊ポイントを目指してたわけです。
すると目指す場所の方から
ワンワンっ!ガウガウっ!
と猛り狂う様な犬の吠える声が聞こえてくる。
野犬かな?嫌だな
と思いつつもサッサと用事を済ませてしまいたかっの、そのまま進んで行くと榊が群れている場所に。
二十代なかば位の男の人がリュックを背負い直立不動の様な姿勢で立っているのです。
真っ直ぐ前を見てあの有名な絵画の様に大きく口を開いています。
犬の吠える声はその男の人の口からテープレコーダーから聴こえる様な大きな音で流れ出していました。
さすがに怖くなりクルリと振り返る同時にダッシュで家に帰りました。
大きく開いた口は全く動いていませんでした。
山にまつわる怖い話25