酒盛り

後輩の話。

学生時代に、仲間と共によく山登りしていたという。
梅雨明けのある時、いつものようにテントを張り、酒盛りをしていた。
散々缶ビールを飲んでへべれけになってしまい、片付けは翌日ということにして早々と寝たのだそうだ。

夜半にテントの外で音がする。
何かがゴミを荒らしていると思い、寝ぼけ眼をこすりながら外を覗く。
一メートルもある大きな蛞蝓が三匹、真っ黒な身体を波打たせていた。
蛞蝓は、ビールの空き缶の山に顔を突っ込んでいる。
慌ててテントの入り口を閉め、寝袋に潜り込んだ。
仲間は誰も目を覚まさず、ひどく心細かったという。

翌朝見てみると、空き缶はすべてクシャクシャに潰されていた。
テント周りの地面には、乾いて光る筋が何本も残されていたそうだ。

後で調べたところによると、蛞蝓は麦芽酵母の匂いに惹かれるらしい。
あの山に行く時は、ビールじゃなくて焼酎にした方がいいですよ。
そう言う彼の言葉は、どこかポイントがずれていると私は思う。

山にまつわる怖い話12

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