私の体験した話。
小学校から高校にかけて、私はひどい漆アレルギーを持っていた。
一旦かぶれてしまうと、皮膚が腫れ水泡は吹きまくり、粘液が絶えずこぼれた。
その腫れたるや並大抵のものではなく、手首や肘が曲がらなくなるほどの状態まで悪化するのだ。
そんな私がなぜ登山部に入っていたのか、皆が不思議がる。
実のところ、自分でも理由がよくわからない。
高校二年生の夏山合宿、珍しく私はかぶれることなく帰還した。
アレルギーがなくなったかと、嬉しくなったのを憶えている。
帰ってきてから四日目、夢の中に見覚えのない老爺が出てきた。
腰が曲がって杖をつき、白い髭が胸まで伸びていた。
老爺はキョロキョロとするうちに私を認め「あぁ居た居た」と嬉しそうに近寄ってきた。
「すまんすまん。忘れておったよ」
そう言いながら右手の杖で、私の身体をつんつんと突付く。
そこで目が覚めた。
次の日から、猛烈なアレルギーが私の全身を襲った。
高熱が出て瞼も塞がり、三日ほど学校を休むことになった。
いらんことをっ! 私は床であの爺さんを呪うことしか出来なかった。
しかしその件以降、ぱったりと漆アレルギーは失くなってしまった。
帳尻でも合わせてくれたのかなぁ、そう何となく思っている。
山にまつわる怖い話15