大きな黒い塊

友人の話。

彼女の実家は山奥深い村だ。
今は廃村となってしまったが、そこで奇妙な物を幾度となく見たという。

山道で小石を拾っていた時のこと。
突然、腐ったような嫌な臭いがしたので辺りを見回してみた。
道の下の方から、大きな黒い塊が這い登ってくる。
臭いの元はそれらしかった。

向こうがぼんやりと透けていて、表面では何か渦が巻いているようにも見える。
思わず道を譲ったが、黒塊は彼女をまったく無視して山を登っていった。

一月くらい後、同じ道で今度は山を降りてくる何かに出会った。
爽やかな緑色をしていたが、なぜかすぐに、あの黒い塊だとわかったのだという。
嫌な臭いはもうしなくなっていた。
バイバイと手を振ってみたが、緑塊はやはり反応せずに山を下っていったそうだ。

山にまつわる怖い話18

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