私の体験した話。
冬場に仕事で遠出した時のこと。
山中の裏道を走っていたのだが、ふと喉の渇きを覚えた。
近くの峠に休憩場があったのを思い出し、そこの自販機で何か買おうと決める。
休憩所に車を停め、車内の空き缶を持って外に出る。
空き缶はゴミ箱に捨てて、ブラックコーヒーを一本購入。
車に戻りコーヒーを缶スタンドに置こうとして、少し身体が固まった。
缶スタンドには、口を切った缶コーヒーが既に置かれていた。
つい先までこのスタンドには、今しがた捨てた空き缶が収まっていたはずだ。
誰の物かわからない缶コーヒーは半分ほど飲まれていたが、まだ仄かに温かい。
周りを見回してみたが、冬の山には誰の姿も確認できなかった。
ご相伴に与るような気持ちでブラックコーヒーを口にした、そんな午後だった。
山にまつわる怖い話18