友人の話。
初夏の山道を歩いていた時のこと。
新緑が自然の天蓋を形作っており、爽やかな空気を楽しみながら足を進めていた。
パラッと小さな音が背後で聞こえた。
振り向くと小さな枝が、自分の残した足跡の上に今しがた落ちたばかり。
何気なく拾って歩き続けたが、再びパララッと落ちてくる。
以降、奇妙にも自分の歩くすぐ後ろで、パラッパラッと枝が振って来るのだった。
何とも偶然だな。
そう考えながらふと見上げた緑の天蓋に、ぼんやりと黒い影。
慌てて視線を下ろす。
はっきりではないが、確かに見えた。
何か大きいモノが自分の後をつけて来る。
支える物とてない木立の上を。
意識して冷静を保ち、歩調を変えずにそのまま歩き続けた。
やがて木立の間を抜けたが、それ以上は何もついて来なかったそうだ。
山にまつわる怖い話18