知り合いの話。
彼女が子供を連れて実家に帰った時のこと。
途中の山道に、地元では嫌な噂のあるトンネルがあるのだという。
そういうことをまったく信じない彼女は、気にすることもなくトンネルに乗り入れた。
いつもと同じ、何も不具合など起こらない。
ただ、トンネルの天井にある電燈が、一箇所だけ暗くなっていたのが気にかかった。
はっきりとは見えなかったが、壊れてでもいるのだろうか?
そのままトンネルを出たところ、娘さんがじぃっと後ろのトンネルを見つめている。
どうしたの?と聞くと、こんなことを言う。
「あのね、天井に、黒いお婆ちゃんが張り付いてたの」
一瞬で思いは例の電燈に結びつき、背筋に冷たいものが走った。
「そのお婆ちゃん、変なんだよ。私を見てニヤニヤしてるんだもの」
とは言え他の道がある訳でもなく、今も里帰りの際はそのトンネルを利用している。
ちょっと嫌なんだけどね。
そう言って、彼女は顔をしかめた。
山にまつわる怖い話19