友人の話。
里帰りした時のこと。
近くの山中にある棚田を散歩していると、白い幟が風に棚引いているのが見えた。
のどかだなぁ、とのんびり眺めていた彼は、やがて奇妙な引っ掛かりを覚える。
その日は風がほとんどないというのに、幟は見たところ強風に吹かれているかのように真横になびいているのだ。
あそこだけ風が違うのか?
遠くから見ているうち、幟はひょいと近くの竿竹に乗り移った。
彼曰く、まるで意思を持っているような動きだったという。
近寄ろうかどうしようか迷っていると、今度はかなり離れた竿竹に飛び移る。
幟のなびき方から判断すると、明らかに風上に位置する竿だった。
そこまで確認した時点で、彼は来た道を真っ直ぐ引き返した。
後で実家の者に聞くと、案山子ならともかく、あんな所に幟なんか立てないよと言われたそうだ。
山にまつわる怖い話21