同級生の話。
登山部で一緒に活動していた時に、こんな話を教えてくれた。
彼の地元には、経塚と呼ばれる塚がある。
高校生の頃、そこの碑に悪さをした悪友がいたという。
昔から祟りがあると言われていた曰く付きの場所だったので、返って悪戯心をそそられてしまったらしい。
碑を足蹴にし、塚に立ち小便をかけたのだと。
仲間は皆、祟りがあるぞと注意したが、悪友はまったく聞く耳を持たなかった。
程なくして、件の悪友は帰らぬ人となった。
交通事故だったらしいが「祟りじゃないのか?」という噂が流れたそうだ。
果たして祟りかどうかは不明だが、皆その塚を避けるようになったという。
目撃談が語られ出したのは、それからしばらく後のことだった。
その山付近を歩いていたパーティの中に、死んだはずの悪友がいたというのだ。
曰く、最後尾を俯いて歩いていたが、向こうの景色が透けていた。
曰く、すれ違った集団の最後に付いていたので思わず振り返ったが、もう背後には誰の姿も見えなかった。
曰く、前を歩いていたパーティに見覚えのある後ろ姿を見つけたので、思わず追いかけたが、どんなに足を速めても追いつくことが出来ずに見えなくなった。
調べたところ、過去その山では、狂い死にした者が続出したことがあったという。
なぜ狂ったかの理由は伝えられていない。
その死者たちを鎮めるために造られたのが件の塚で、経塚も元々は狂塚と書いていたのだとか。
昔は、その山の近くで死んではいけない、死にたくないと皆が言っていたそうだ。
そこで死んでしまったら、狂いミサキに連れて行かれるのだと。
今は別の登山道が使われるようになり、その塚の場所を知っている者も数少なくなっている。
「知っていても行かないけどな」彼はそう締めくくった。
山にまつわる怖い話21