場違いな声

友人の話。

彼女の実家は山村で米作りを営んでいる。
稲刈りも終わった頃、畦横の水路を掃除していた時のことだ。

作業している彼女の背後では、山と積まれた籾殻が燃やされていた。
燃やすといっても炎を上げて燃やすのではなく、線香のようにゆっくりと数日間かけて灰にするのだそうだ。

スコップと土嚢袋を手に掃除をしていると、場違いな声が背後から聞こえた。

 あぁ~~ぁ ふぃ~~ぃ

まるで中年男性が、風呂に肩までつかった時のような、気持ち良さ気な声。
ぎょっとして振り返ってみたが、薄い煙を上げる籾の他は何も見当たらない。
気にしないことにして作業に戻ったが、その後も同じ声を何回か耳にした。

何かが暖を取っていたのかな? そんなことを考えた。
以来、毎年籾殼に火を着けるたびに、その声を思い出すという。

山にまつわる怖い話23

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