知り合いの話。
好事家の彼は、同好の士とよく廃村巡りをしている。
ある山中の廃村に出向いた時のこと。
そこは最近まで居住者がいたらしく、まだ家屋も崩れきっていなかった。
車を停めてから森の中をかなり歩いたが、その裏寂れた雰囲気は大いに気に入り、来た甲斐があったなと思ったそうだ。写真を何枚か撮って帰途に着く。
写真部の仲間に現像してもらうと、まるで思ってもいない仕上がりとなった。
彼ら自身が写っている写真には何もないのだが、廃屋や標識跡を撮った画像にはそこにいなかった筈の人物が、くっきりと写り込んでいたのだ。
それも一人や二人ではない。かなりの集団だ。
不思議なことに、どの人も頭に何かを被っていた。
帽子を被っている者。蓑笠を被っている者。防空頭巾のような物を被っている者。
その全員が一人の例外もなく、被り物の奥の顔は見えない。
ただそこだけ、墨で塗りつぶしたかのように真っ黒になっているだけ。
知り合いの寺に持ち込んだが、そこの住職さんも困ってしまったらしい。
とりあえずお経を上げてもらい、ネガごと預けて帰ってきたという。
彼らの身には今のところ、何も悪いことは起こっていないそうだ。
山にまつわる怖い話23