知り合いの話。
山で木を切っているとどこからともなく、おーいと呼ぶ声がする。
誰だ?と呼び返してみると、よく聞き取れない返事があった。
くり返す潰れた声に耳を澄ますうち、ようやっと内容が聞き取れた。
右手がないんじゃぁ
何のことだろうと訝しく思っていると、不意に耳元で重い声が聞こえた。
そこか
驚き振り返るが誰も見えない。それきり呼ぶ声も絶えている。
気味が悪くなり、そこで撤収したのだという。
その次の入山日に大きな事故が発生し、彼は右の肘から先を失ってしまったそうだ。
山にまつわる怖い話23