チブスマ

友人の話。

夕暮れ時、闇が濃くなる山道を歩いていると、行く手を塞ぐ物が見えた。
壁だ。大きさは立横が二メートルほど、厚みはあまりない様子。
微かにピンク色で、ぼんやり向こうが透けている。
遠目で見た感じ、ゼリーか寒天を連想した。

近づくと、その壁がぶるぶると小さく震えているのがわかった。
加えてひどく生臭い。間近で見ると、内側に何かが埋め込まれていた。
ゆっくりと動いている。何だろうと凝視してみる。

自分が何を見ているのか、最初まったく理解できなかった。
それは薄べったくなった人間の手だった。力なくニギニギをくり返している。

押し潰された人が中に納められている!?
だとすると、一面に走っている赤い筋は血管だろうか。
右下の方にはぼんやりと白い球体が見えた。とても覗き込めない。

半分腰を抜かし、ほうほうの体でそこを逃げ出した。
後で地の者に聞いたところ、あれはチブスマと呼ばれているものらしい。
入ってはいけない日に入山した者が、閉じ込められているということだ。

しかし、その山で行方不明になった者はしばらく出ていないという。
何だったんだろうなアレって。彼はそう言って顔を顰めていた。

山にまつわる怖い話24

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