友人の話。
学生時代、部活でキャンプしていた時のことだ。
宿営地より少し離れた場所に、ジュースの自動販売機があった。
就寝時間が近い頃、コーラでも買おうと一人出かけたという。
お金を入れて商品のボタンを押す。
ボトッと潰れた重い音がした。硬い缶の立てる音ではない。
何が落ちた?
取り出し口を開けると、黒く小さな物がわさわさ動いていた。
思わず手を引っ込める。
しなびた人間の手首が、外に出ようと爪を立ててもがいていた。
テントまで素っ飛んで帰り、仲間を連れてすぐに戻る。
彼が見た手首など影も形もない。
ただ空になったコーラの缶が薄暗い外灯の下、カラカラと転がっていた。
山にまつわる怖い話25