友人の話。
山菜摘みに地元の山へ入った時のこと。 
頭よりも少し高い梢から、黒い蛇が鎌首を覗かせているのに気がついた。 
蝮だと嫌だな。そう考えた彼は、石を投げて追い払おうとした。
石は当たらなかったが、怒った蛇は彼に向かってきた。 
ブーンという振動音が聞こえ、細長い身体が宙に浮かんだ。 
目を疑う。蛇の背には、蜂を思わせるような羽が何枚も生えていたのだ。 
身をくねらせると、軽やかに空を渡って彼に襲いかかる。
これは堪らんと必死で逃げ出したが、流石に蛇らしくしつこかったようで、谷を一つ越えるまで延々と追いかけられたという。 
「あれ以来、高所の蛇には手を出さないことにしたよ」 
コリゴリといった様子で、そう彼は話してくれた。
山にまつわる怖い話25
