知り合いの話。
秋口の茶色い山をのんびり歩いていた時のこと。
送電線の鉄塔を過ぎる辺りで、カンッという硬い音が聞こえた。
直後、足元に小石が転がってくる。
誰が投げたんだろう?
見回してみたが、開けて見晴らしのよい枯れ野のどこにも人の姿などない。
音や石の大きさからして、そんなに遠くから投げてはいない筈だが。
また、カンッと音がする。
鉄塔の下には、数え切れないほどの小石が散乱していた。
といきなり、誰かにじっと見られているかのような、嫌な感じが襲ってきた。
このままここにいると、標的が自分になるような気が、なぜかする。
そうなる前に、足早にそこを通り過ぎたのだという。
山にまつわる怖い話25