友人の話。
地元の山を歩いている時のこと。
視界の隅に白い物が見えたと思った途端、柔らかい物に飛び掛かられた。
それは滑々とした布のような感触だったらしく、彼の上半身をすっぽりと覆ってしまったらしい。
強く締め付けられた彼はパニックを起こし、何とか剥がそうと地面の上を転げ回ったが、どうしても取れない。
偶々手に触れた枝を折り取って、矢鱈滅多に突き刺しているうち、やっと逃げ出すことが出来た。
それはひらりと宙を飛び、暗い山の中へ消え去ったという。
近くの親戚の家まで辿り着くと、身体のあちらこちらから血が出ていた。
親戚は手当てをしてくれながら教えてくれる。
彼を襲った白い布はヤマジュバンと呼ばれていた。
襦袢という名前のごとく人をすっぽりと包む物だというが、それは血を吸う為であるということだ。
金属の刃物でなければ斬ることが出来ないとも聞かされた。
彼はそれ以来、山に入る時は鉈や鎌を常にぶら下げているのだという。
山にまつわる怖い話25